Sadler Wells - 劇場のススメ - ひとり鑑賞シリーズ
バレエの劇場、Sadler Wellsでモダンダンスの鑑賞。
劇場自体はかなり新しく、1998年に建て替えられたばかり。内部はかなりモダンで、清潔感があった。
ただ、歴史は古く、シェイクスピアの劇も沢山上演されていたとのこと。
劇場内の片隅には、Sadler Wells(サドラーの井戸)という劇場名の由来になった井戸が当時のまま残っている。
今回の公演は、Reckonings 。
3人のカリグラファーがそれぞれのテーマをもとに30分ずつのダンスを見せる。ひとチーム6人から10人くらい。
行ってから気づいたのだけど、なかなかメッセージ性の強い公演だった。ジェンダーや、レイシズムに迫る、バックグラウンドが、人の多様性に富むイギリスらしい。
ひとつ目は女性について。ダンサー全員が女性。女性同士の関係や葛藤を表現する、静かな雰囲気の中、最後は全員のスキップでシンクロナイズドする。何か意味を考えようとしながら観るけど、途中で考えるものでもないかと思い直し、ただ動作や表情、世界観を楽しむ。日本の旧劇団、維新派の舞台に似ていた。
2つ目は黒人のアイデンティティ、子供の頃に植えつけられた心のわだかまりとの戦い、のようなテーマ(多分)。これはダンスの技術、迫力、アンビエントの音響とリズムがとてもマッチして素晴らしかった。
終わった後の黒人の観客のスタンディングオベーション、どっと湧いた場内、これが何より凄かった。
3つ目も黒人のテーマだったが、ダンサーには白人女性も混ざっていて、セリフなどもあって、抽象的なミュージカルのようだった。生演奏の音楽は良かったが、全体としてはイマイチ。
2ポンドのプログラムを買って見ていると、キャストの中に日本人の名前もふたり。このあたりもこの国の人の多様性を感じる。
日本ではきっとこういうものは公演されないし、日本人が見てもあまりピンとこないだろう。
モダンダンス、動きのシンクロやダンスの技術を楽しむものではないけど、表現やメッセージ性の持たせ方は多様で、なかなか奥が深い。